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スーチキ: 1匹の猫が来て、そして去って行った。

大変永らくご無沙汰しております。
書きたいことは日々いっぱいあったのだけど、なんだかバタバタとして、ブログを書くどころか、お気に入りブログを読む余裕もない有様です。が、どうしても書いておきたいことがあり久しぶりにブログを開きましたー。

タイトル通り、「スーチキ」という1匹の猫の話です。
猫ボラ仲間のNさんから、「相談したいことがある」と電話をもらったのが3月の8日。相談とは、昨年11月に心筋肥大症と診断されて入退院を繰り返していたスーチキを引き取ってもらえないか、ということでした。

スーチキは、お腹に水が溜まる症状が出ていて、腹水がで始めると2週間から長くて1年半ほどで亡くなるとわたしもネットで読んでいたので、そろそろ誰かの家に入れたほうが良いのではないかと思っていた頃でした。ただ、うちは、パリちゃんがいた頃と違ってハム太も大きくなってバタバタキャーキャー走り回っているし、パリちゃんが使っていた部屋には小さなトランポリンが置かれているしで、猫自身のストレスになるだろうし、新たな猫を迎え入れるのは難しい……とNさんには伝えたのです。が、その話を夫にしたら、特に何も考えずに「いいよー」という反応だったので、わたしも「部屋を仕切ればなんとかなるかも」と前向きな気分になり、受け入れをOKすることにしました。

すると、あれよあれよと話が進み、返事をした2日後にはスーチキが我が家にやって来たのです。

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わたしには懐いているけれど、急に知らない場所に連れてこられたスーチキはさすがにビクビク。部屋に用意しておいたケージに逃げ込んだものの、その後、ベッド下に移動。そうなることは予想していたので、初めからそこにふかふかの毛布を敷いておきました。そして、1日はあまり声もかけず、放っておきました。

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2日目に、毛布を引っ張ってみたら、素直に毛布に乗ったまま出て来たスーチキ。そう、初めはこんな風に、毛布を全部はひっぱり出さずに、一部ベッド下に残してスーチキが隠れている気持ちになれるようにしていたんだっけ。つい半月前のことがもう懐かしいです。

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毛布を徐々に引っ張り出して、ついに部屋の真ん中に座っていられるようになったスーチキ。
スーチキは、外ではとても怖がりで、遠くに知らない人影が見えただけで隠れるような猫です。そして、男の人がとっても苦手。なので、初めの方は夫に遠慮してもらうようお願いしていましたが、数日で、夫が部屋を覗いて声をかけても平気になりました。不特定多数の人がいる戸外と違って、決まった人しかいない家の中にいると、安心するんですね。スーチキは、仕切りの中にはわたししか入ってこないと安心しきっていたのか、ハム太が部屋のドアをバンと開けて乱入して来ても、逃げなくなりました。

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うちに来て6日目の写真。最初と顔が全然違う〜。
あまり時間がかからずに慣れてくれたのはいいのですが、ずっと食欲が今ひとつなのが気がかりではありました。そもそも、前の病院を退院して、うちに来ることになったのも、入院中でもばくばく食べていたスーチキの食欲が落ちて、手の施しようがなくなったから、だったのです。でも、何度も入退院を繰り返していたスーチキなので、また元気が戻るのではないかと思ってました。

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うちに来て1週間目。ふと覗いたら、定位置の毛布の上に姿がなくて、「いない!」と思ったら、なんとベッドの上に置いておいたニャンモックに埋もれる姿が! うちの猫たちが全く使ってくれなかったニャンモックなのですが、もしかしたら・・・と期待を込めておいておいたんです。が、スーチキは毛布の上から動くことがほぼなかった(ご飯も、毛布にうずくまったまま、わたしが食べさせてあげてました)ので、すっかり諦めていたのです。この日はとっても嬉しかったなぁ。

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しかし、食欲不振が深刻になって「それだけしか食べないの?」と心配するようになった頃、よーくみたら、右のほっぺが腫れている。1ヶ月ほど前に喧嘩をしたのか右ほほを噛まれたいたのですが、その傷が再燃してしまったらしいのです。病院に行くと、猫の咬み傷は小さいので表面は治りやすいのだけど、奥に菌が残って1ヶ月後に腫れるというのはよくあることとのことでした。抗生物質を貰ったのですが、この傷はどんどん腫れて、2日後に破れて血膿がかなり出ました。スーチキはそれで気分が良くなったのか、その日はたくさんご飯を食べました。

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ほっぺの傷が破れた時に汚れてしまったので、毛布を洗おうと思って、薄い毛布に乗せたら「いやいや、こっちがいいですっ」とふかふか毛布に戻って来たスーチキ。ハンモックに乗せても不満顔。それでも取り上げて洗ったら、その日は1日、部屋を覗くたびに「ニャオ(早く毛布返して)」と文句を言っていました。うちに来てから、体調が悪いせいか抱っこをあまり喜ばなかったのだけど、毛布が乾いてから敷き直すために薄い毛布も取り上げたらさっと膝に乗って来たスーチキ。「お膝はいいねえ」としばらくゴロゴロ甘えんぼ。しかし、毛布を敷き直した途端に「あっしはこっちで」と毛布に帰って行きました。これも、今となっては大切な思い出。

食欲が戻って一安心、かと思いきや、次の日からまたあまり食べなくなってしまったスーチキ。病院へ連れて行って、胃の調子が良くなる注射をして、薬を貰って、何日か経てば元気になるかと思ったのですが、大好きな胸肉のおやつさえ食べなくなってしまい・・・4月の1日に病院へ連れて行ったとき、なんと、体温が32度になっていました。こうなるとあまり長くないかも、と言われ、わたしも言われるまでもなく、そうなのだろうと思いました。

その日の午後、Nさんを初めボラの3人の方が、スーチキに会いに来ました。この頃、とてもだるかったのか、わたしが声をかけても、ハム太が騒いでも、耳さえ動かさなかったスーチキですが、Nさんが声をかけた時に耳をピクピクっと動かしました。ここ3年ほど、わたしは週に1回しかボラに入っていないですが、Nさんは毎日来てくれる人。会いたかったんだと思います。

ハム太がついて来てしまうので、わたしは主にハム太が朝起きる前と、夜寝た後に、スーチキの世話をしていました。特に夜は比較的長い時間を取りやすく、薬を飲ませたり、ご飯を食べさせたり、マッサージをしてあげたりしながら一緒に過ごしていました。うちに来たばかりの頃は、頭をごつんとぶつけて来たり、わたしの周りを1周したりしてくれていましたが、どんどん、立ち上がるのも大変になって来たのでしょう、あまり動かなくなって来ていました。よく、心臓に耳を当てて音を聞いていました。ゴロゴロ音とともに、小鳥みたいに速い心音が聞こえていました。スーチキの心臓、頑張って動いているなと思っていました。

4月1日の夜は、胸に耳を当てても、ゴロゴロ音は聞こえて来ませんでした。そして、心音がゆっくりになって来ているのに気がつきました。パリちゃんもそうでしたが、猫は最期の方になると、なぜか目を開けたままぼんやりしているように思います。目をつむればいいのにと思うのですが、開けっぱなしになるのです。

その日の午後から、スーチキは大きな目を開けたまま、ぼんやりしていました。夜になって、すぐ側でじっと見ていたら、時々、目が細くなり、眼球が小刻みに動いているのがわかりました。夢を見ているのだ、と思いました。気がつくと夜中の1時になっていて、わたしも少し眠らなければならない。できたらそばにいたいけど、ハム太は夜中に何度も目を覚まし、わたしがいないと大泣きするので、「少し寝ようね。また明日ね」と声をかけて、電器を消して、部屋を出ました。

目が覚めると朝になっていて、少し迷ってから、スーチキの部屋に行きました。スマホを見ると6時でした。いつものように声をかけてから部屋に入ると、クチャクチャと口を動かす音がしました。食欲がなくなってからというもの、わたしが何か食べさせようとするため、反射的に口をクチャクチャさせるようになっていたのです。近寄って触れてみると、スーチキは死んでいました。たくさんおいた湯たんぽのせいか、体はまだ温かかったけれど、脚はすでに硬くなっていました。目と口は少し開いていたけれど、脚は寝る前にわたしが揃えてあげたそのままの格好で、あまり苦しんだようには見えませんでした。できたら、最期の瞬間、一緒にいてあげたかったけど、スーチキ的には一人で夢うつつの状態から旅立ててよかったのかもしれない、とも思います。

みんなと相談して、お葬式は次の日に。きっと生涯初めての首輪だろう、可愛い黄色のリボンをつけたスーチキを黄色いお花と一緒に箱に寝かせて、タクシーでスーチキの暮らしていた場所へ向かいました。良いお天気で、桜は満開。スーチキを愛した人たちが8人集まってのお葬式でした。みんなそれぞれお花を用意していたんですが、誰かが「やっぱり、黄色のイメージですよね。わたしも黄色い花にしたんです」と。ある人が、一緒に埋めて欲しいと用意してくれた新品のタオルも黄色。黒猫だけど、明るくハッピーなイメージだったのかな。

スーチキは、爪を立てたり噛んだり一切しない猫で、毎日投薬が必要だったのですが、抵抗せずにおとなしく飲んでくれるのでとても助かりました。病院でも「外にいた子とは思えない」と言われたスーチキ。良い猫でした。本当はもう少し長く家にいて欲しかったけど、あまり苦しまずに亡くなったのはよかったです。

後日談、ですが、いつも誰か亡くなるたびに不思議なことが一つや二つ起こるのですが・・・スーチキの場合、亡くなったのを確認した後も、わたしが様子を見に行き声をかけるたびにクチャクチャと口を動かす音が聞こえていました。思わず「死んでるよね?」と確認してしまうほど・・・それから、整えていたはずのハンモックが、猫が乗ったように凹んでいたのです。スーチキが亡くなってから、冷やさないといけなかったので、部屋も冷房でキンキンにしてドアを閉めていました。なので、うちの猫たちが乗ったわけでもなく・・・。わたしが思うに、スーチキは眠りながら亡くなったので、自分が亡くなったことに気づいていなかったのではないかと。そして、今は軽くなった体で、我が家で飼い猫生活を楽しんでいるのではないか、と思います。

たくさんゆっくりしていったらいいよ。
そして、またいつか会おうね。黄色いリボンで遠くからでも見分けるからね。
ありがとう、スーチキ。










Commented by YUE at 2019-04-10 12:15 x
そんなことがあったんだね・・・。

スーキチくん、お疲れ様。
この世はいろいろあったろうけど、最後、暖かい所で、そして、ボラのみなさんに見送られて、そして、ここに生きていたよ・・・とブログで発信してもらえて、よかった、よかった。
全く知らない私もちゃんとスーキチクンのこと、知ったよ。
虹の橋のたもとで、ゆっくり楽しく過ごしてね。
Commented by yue at 2019-04-10 12:17 x
あっ、スーチキくんだ、ごめんよ。
でも、許してくれそうなスーチキくんだ・・と思います。
Commented by umitoramarine at 2019-04-10 23:43
*YUEさん

スーチキはスーキチでも、にゃんとお返事してくれると思います!
ほんの2週間ほどのことでしたが、最期のお世話をできてわたしも幸せでした。
外では長い付き合いでしたが、一緒に暮らして見て初めてわかることってあって、スーチキは思ってた以上に我慢強く良い子でした。
今頃、楽になった体で元気に走ってるかな〜。ハンモックで寝てるかも〜。笑
Commented by papricagigi at 2019-04-11 05:06
umiさんの淡々とした文章が、余計にスーキチの静かな存在を描写しているようで、場面が浮かんできたよ。黄色のイメージの黒いスーキチ。短い間だったけど優しくしてもらえて幸せな最後だったね。
umiさんの周りには不思議なことが時々おこるよね。不思議だけど、umiさんのところだと、それが妙に自然にみえるよ。

最初、スーキチを「ステーキ」と読み間違ってしまってさ(苦笑)。変わった名前だなーって思ったよー。あはは。
Commented by umitoramarine at 2019-04-13 14:31
*papricaさん
ありがとう。
何年も前、まだスーチキが元気だった頃にふと、「いつかこの子と暮らす」って想像をしたことがあって、他に何十匹も猫がいる中でなぜスーチキだったのかわからないけど、それが現実になったようにうちに来たんだよね。不思議なこと、起こらない? というか、普通はそんなに看取る機会もないよね。わたしはこの家に来て6年ですでに3匹目になってしまったー。

でも、亡くなったのがうちの猫だったら、もう悲しくて悲しくて仕方ないだろうけど、外猫の場合は急に亡くなったり、最期の旅に出ちゃって見つからなかったりもあるから、わたしも他のボラさんも、ちゃんと最後まで看てあげられたっていうので、悲しみよりも安堵と感謝の念が大きくて「ありがとう」と見送ってあげられるよ。家の猫と比べて愛情が劣るというわけじゃないんだけど。

ステーキ! 確かに読み間違えそう〜。まだ生きてたら、「ステーキ!!」って呼んだら来てくれるかどうか試して見たかった・・・笑。
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by umitoramarine | 2019-04-05 22:57 | ねこばなし | Comments(5)

アラフォーのわたしと夫と猫2匹の暮らしに、男児が一人加わりました(2016年11月)。おいしいもの、猫、本、アートと子育て日記。


by umi