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生存報告。

生きています。そーちゃんもわたしも。
前回の投稿がは8月末だったので、あれからもう2カ月近く経とうとしているとは。
確定診断はいかに…!?というところで終わっていて、失礼しました。

その後の沈黙から想像されることかもしれませんが、確定診断はお約束のように裏返り、『低悪性度(低グレード)リンパ腫』と診断されました。そこに至るまでの過程からも、ちょっと覚悟していましたが、実際に聞いたときはやっぱりショックでした。ただ、低グレードリンパ腫は、とても進行が遅く、抗がん剤を使わずに症状を抑えられる子もいるということで、気を取り直そうとしていたんだけれど……それだけでは済まなかったの。

ある朝、起きてみると、そーちゃんの呼吸が荒くて。お腹の上下がわかるような呼吸になっていて。
「え…?」となりました。
腸管のリンパ腫については、生検を行ったときの画像を先生が見せてくれて、それまでのステロイド投与で十分抑えられていてきれいな状態だったと言われていたの。では、この呼吸の悪さは何なのか……ということで、N病院で言われた肺の虚脱なのか、胸腺にリンパ腫が転移しているのか、あるいは、まったく別の何かが悪さをしているのか、を探す旅が始まりました。

そして、今度こそCTを撮ろうということになり、もしも胸腺腫や大きな腫瘤など、手術を要するものだった場合を考えて、検査のみを行うクリニックではなくて、友人Fちゃんの紹介で、かなり離れたところにある、外科の名医のいる病院へ行ったのです。

けれども、その名医の先生は、これまでの検査結果をよく吟味せずに「はい、抗がん剤やるよ!」と高グレードリンパ腫の点滴をしようとしたり、「腫瘤が邪魔して呼吸ができないんだよ!」と手術する気満々になったりしたものの、結局、細胞診とCTを撮った結果、「理由はわからないけど、肺の一葉が死んでる。心臓が拡張している。肺は別の葉にも炎症が起きつつある」という結論に落ち着き、諦念の表れた表情で、大量の心臓の薬をくれたのでした。

その結果を持ち帰ったものの、かかりつけのA病院では、「pro-BNPが低いということは心原性ではないはず」「SAA(炎症性マーカー)が低いから、炎症は起きていないはず」ということになり、結局、今に至るまで、なにが悪いかわかっていないのです。

でも、そーちゃんの具合は、緩やかに右肩下がり……かなぁ。
9月のわたしは、そーちゃんの病気を突きとめたくて、ネットでひたすら調べ物をしていました。炎症性ではない胸水の原因を調べていて、『乳び胸』なんて聞いたこともない病気に辿り着き、「これでは?」と言ってみたところ、先生の反応は「うーん」という感じだったんだけど、なんと、胸水を抜去したところ、本当に乳びだということがわかったの。そして、乳びを治すには、高容量(1日2,000㎎)のルチン(ビタミンP)を投与することで奏功することがあるという論文も見つけてやってみたのだけど、あまり効いている様子は見られなかったのでした。

乳び胸の治療としては、手術をしてリンパ管を繋ぐ手もあると先生は言い、わたしも調べて知ってはいたけれど、この期に及んで、再度そーちゃんにメスを入れようという気にはなれない……。そんなことをしても、きっと、元気なそーちゃんに戻ることはないんじゃないかな。もしかしたら、残りの時間が少し長くなるということはあるのかもしれないけど、きっとそれは、ダメージを負ったそーちゃんの時間が長くなるということだと思う。

それで、10月18日から、完全に投薬を止めてしまいました。元々、効いているのかどうかわからない薬を、一日に6~7種類も飲ませていたの。そーちゃんは、無い元気を振り絞って精一杯抵抗するし、わたしも横になっているそーちゃんを起こして、無理やり口に薬を入れるのがとても辛かった。一度には出来ないから、何度も何度もやり直して、そーちゃんはゼーゼー、わたしは半泣きで。そーちゃんにとっては、一番信頼できる人間であるはずのわたしがそんなことをするから、ただ撫でようと思ってもウゥと怒られたり、そっぽを向かれるのも辛かった。良くなる見込みがあるならそれでもがんばろうと思えるけれど、ただ辛い時間を引き延ばすだけに思えてね……。すべての薬とサプリも止めたけど、そーちゃんの様子に大きな変化はありません。はじめの頃は効いていたものもあったけれど、もう効かなくなってきたのかも。

この頃のそーちゃんは、ほぼずっと横になっています。呼吸が悪くなってから、酸素室を買いました。買った当時は、今よりは呼吸が楽だったからか、入らせても嫌がって出ていたけれど、最近は自分から入っていることが多いです。

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ファスナーから手を差し入れて、頭を撫でると、顔をぐいぐい押し付けてくるそーちゃん。
最近は、波のあるそーちゃんの様子に、一喜一憂しながら過ごしています。
ごはんをちゃんと食べたり、良いウンチが出ているとうれしい。
いつの間にかわたしも、そーちゃんが病気でいることに慣れてきてしまった気がする。

時々、思ってしまうことがある。
ある朝目が覚めたら、そーちゃんが亡くなっていたら、その方が良いんじゃないかって。
もちろん、願うなら、これが全て夢であってほしい。起きたら元気なそーちゃんが隣にいてほしい。
でも、そうじゃないと知っているから。そして、どれほど苦しい末期が訪れる可能性があるかを知っているから。
苦しむそーちゃんを見たくない、というのは、わたしのエゴなのかもしれないけれど……。

そんな今日この頃です。
でもまだ生きている。そして、呼びかけにも応えてくれる。
だから、これまでも毎日毎日、伝えてきたけれど、変わらず、大好きだよ愛してるよと伝えていきます。


# by umitoramarine | 2022-10-22 22:43 | ねこばなし | Comments(0)

生検後・・・そして。

そーちゃんは、27日のお昼に、無事退院してきました。
が、その後、あまり元気ではなく、食欲もないみたい。

撫でていると、手のひらに顔をうずめて、ゴロゴロと喉を鳴らしてくれる。
その音の盛大さに、検査のための手術、入院がそーちゃんにとってどれほどの不安だったかを思い知らされる。

振り返れば、初めから生検をやっていればよかったのかもと思ったりもしたけれど、
やはり、今あの場所に立ち返っても、簡単には決められなかったなと思う。
年齢的なものもあるけれど、避妊手術のときよりもずっと大きなダメージを受けているように見える。

生検後・・・そして。_f0370142_23543390.jpeg


なかなか回復しないそーちゃんを見守る中、生検と同時に出したクローナリティ検査の結果が先に返ってきた。
クローナリティ検査というのは、あくまで他の検査と組み合わせて検査制度を上げるため、補助的に行われるものなのだけど、リンパ腫や白血病の診断で、リンパ球の増殖の仕方を評価して、腫瘍性かそうでないかを見るもの。

それがなんと……そーちゃんのリンパ球は「腫瘍性のものではない」とのことだった。
高グレードも低グレードもなく、そもそもリンパ腫じゃない。リンパ腫では、ない!

なんだか、もっと喜んで良いのかもしれないけれど、「はあ、そうですか」と電話口のわたしは冷静だった。
というのは、生検前のそーちゃんの回復具合から、高グレードではなさそうだったことと、
単純に勘なんだけど、そーちゃんの病気は別のものであるという気がしていたから。

一時は、来年の誕生日は一緒に迎えられないことを覚悟したわけだけれど、今は、喜びよりも脱力というかんじ。
どうしてこんなことになったんだろう。
わたしが思っている病気だった場合、この生検は必要だったのかな?などと考えている。
それでも、やはりリンパ腫でなくてよかった。うん、よかった。

たぶん、来週の終わりか再来週の頭には、組織診断の結果が返ってくる。
そしたら、今度こそ、確定診断が下るはず。
あまりにも、診断がひっくり返るのに疲れてしまったので、粛々と確定診断を待とう。




# by umitoramarine | 2022-08-31 00:19 | ねこばなし | Comments(0)

二転三転、七転八倒、七転び八起き?

こんにちは。
今、そーちゃんは、かかりつけのA病院に入院しています。
確定診断を得るための、開腹手術を昨夜、受けたからです。

8月9日に初診を受けてから、ここに至るまで、本当に長かった……。
実は、わたしは今コロナに感染していて(おそらく)、お見舞いにも行けないけれど、手術は無事に済み、そーちゃんも順調に回復しているようで、9日以来、本当にひさしぶりに、心と頭を休ませています。
あとは結果を待つだけ。そしたら、ちゃんと適切な治療が始められる。
そういう安堵。

ここに至るまで、毎日のように診断がひっくり返り、何を信じて良いのかさっぱりわからなかったのです。
一体、何回転したのだっただろうか。
退屈な記述となるだろうけれど、自分の頭の整理のため、書き出してみます。

二転三転、七転八倒、七転び八起き?_f0370142_00133349.jpeg

8月9日 食欲不振で初診 エコーとレントゲンにて、胸水と心臓の若干の肥大を認め、心筋肥大症と診断される。

8月12日 心臓の薬を投与するも、まったく食べないためA病院再診。腸に炎症を認め、腸間膜腫瘍かFIPの疑い。
     胸部にも炎症があるが、全く別の腫瘍が同時に存在することはほぼないため、腸の腫瘍の転移を疑われる。
     心筋炎症マーカー(pro-BNP)の結果が有意に低く、心筋炎(心筋肥大症)は否定される。
     炎症を抑えるためにステロイド注射。  
     A先生は、確定診断を得るために開腹手術を勧められる。
     先生は「無麻酔の細胞診という方法もあるが、この部分にある炎症を、腸を傷つけずに採ることは困難。
     僕はできない。これを自信を持って『できます』という獣医はいないのでは」と言っていた。
     麻酔のリスクを考えて開腹手術の決断はできず、まずCTを撮ることにする。
     
8月13日 そーちゃん、ステロイドの効果か、ご飯を食べる。
     CTを取るためにN病院(24時間救急の大病院)へ。
     しかし、心筋肥大症と診断され、麻酔のリスクがあるからと、CTは撮ってもらえず。
     (撮るとしたら手術と同時にとのこと)
     pro-BNPの結果の話をすると「数値が低いからと言って心筋症ではないとは言えない」と言われる。
     胸部は炎症ではなく肺の一部がつぶれているとの推測。

     腸の炎症の細胞診を勧められる。
       その部分の細胞診は腸を傷つけるリスクがあると言われましたが」と言うと、
     「リスクはもちろんありますが、よくやる処置です」と自信を持って言われたためGOサイン。
     見事に細胞は採取される。
     細胞診(顕微鏡)にてリンパ腫の疑い→確定診断のため病理検査外注。 
     リンパ腫の”がん細胞を減らし、腸の裂開を防ぐために” 手術を勧められる。
     
 
8月15日 手術の話をしに、N病院へ。違う先生が対応し「胸水は心臓由来と考えている」と言われる。
     心臓病で胸水が出始めると余命は2週間から長くて1年半と言われているため、
    「その手術に意味はあるのでしょうか」と問うと、「病理検査の結果が出てからにしましょう」と終了。
     こわがるそーちゃんを、タクシーに乗せて、往復6000円かけて行ったのに……。
     何の相談もしてにないのに、相談料と薬代で13000円ほどもした。

8月18日 A病院の先生に相談。
     N病院にて言われたことを話すと、「炎症が起きていないということは心筋炎ではありません。
     じゃなかったら何のための検査なのか。血液は嘘をつきません。」と言われる。
     また、手術については「手術って、病巣を全部取り切れると思ってるんですか。
     全部切らなければ、悪い細胞と悪い細胞はくっつきませんよ。それこそ、つなぎ合わせても破れますよ」

     N病院がCTを撮らなかったことにもご立腹で、受付Wさんに、「こんなことになるとは」と、
     N病院を紹介したことを謝罪される。

     閉院後、21時まで相談に付き合ってくれたのに、A病院は相談料も受け取らなった。

     どちらが正しいのかさっぱりわからず混乱するが、A病院の先生が「できない」と言った細胞診も、
     事も無げに採取できたことから、N病院の先生のほうが臨床経験が豊富なのでは……と思い始める。

8月21日 A病院から電話があり、
     「pro-BNPのことを、大学の動物病院の獣医に確認してみたら、pro-BNPの値が低くても
      心筋炎であることは否定できないと言われた。
      また、同時に別々の腫瘍が複数個所にできることもよくあるらしい」
      と言われる。

     自分の言ったことを疑い、確認し、連絡をくれる姿勢に誠実さを感じるが、やはり、この先生は
     臨床経験が少ないのだと、そーちゃんを任せるのは不安に思う。

8月22日 N病院から電話あり、病理検査の結果「リンパ腫の疑い」という結果だったと言われる。
     細胞診の病理検査では、高悪性度(高グレード)のリンパ腫のみが特定可能なため、
     「それは、高グレードではないということですか?」と聞くと「そうです」と言われる。
     高悪性度のリンパ腫は進行が速く、予後が悪いため、その点は良かったが、
     やはり確定診断がつかず治療が始められないということでもあった。

     夜、そーちゃんの病気を聞きつけた猫ボラの先輩Fちゃんから電話があり、
    「実家の近くの名医(T先生)に聞いてきてあげる! 聞くだけならタダだから!」と言われ、データを送る。

8月23日 A病院の先生の臨床経験が信頼できなくなったため、腫瘍認定医を探す。
     I病院へ、そーちゃんは置いてセカンドオピニオンだけを聞きに行く。
     N病院でもらった細胞の写真を見せると
     「これだけじゃ何とも言えないけど、高グレードのリンパ腫に見える」と言われる。

     手術に関しては、「最近は手術をする傾向があるみたいだけど、ちょっと前までは、
     リンパ腫は抗がん剤がよく効くのに、わざわざ手術するなんてナンセンスって言われてたんですよ。
     私ならすぐ抗がん剤治療をします。手術は、腸が穿孔したときです。」と。
     
     先生と話した結果、手術はしないこと、そして、この先長くないそーちゃんのために、
     抗がん剤はやはりA病院で受けることを決意する(通院の負担を減らすため近所がよかった)。

8月24日 A病院から電話で「やはりそーちゃんは心筋炎ではありません」と言われる。
     心筋肥大症の権威の論文で「pro-BNPの値が低くても潜在的な心筋炎は否定できないが、
     臨床症状が出ている場合、pro-BNPの値は必ず100を超える」とあったらしい。
     つまり、胸水が心臓由来であれば、そーちゃんのpro-BNPが100以下なのはおかしいことになる。
     すなわち、そーちゃんは、心筋肥大症ではない。

     また、CTを依頼したN病院からその後の連絡がまったくないため電話をしたところ、
     細胞診の結果は、高グレードを否定するものではなく、細胞がつぶれていて判定不能だったと言う。
     そして、わたしの記憶にはなかったが、N病院は胸部の細胞も採取しており、
     それは『混合炎症』(炎症は起きているが癌細胞は見られない)と診断されたとのこと。
     なんでそれを電話で伝えてくれなかったのかなぁ~。

     同時に、Fちゃんから連絡あり、「T先生、心筋炎のこと大否定してた。これで心筋炎なら死んでるよって」
     そして「T先生なら手術はしないって。猫で腸が裂開する事例は見たことないって。
     なんで早く抗がん剤を始めないのか、リンパ腫は抗がん剤治療の早さが勝負だよ、と言っていた」と言われる。

     確定診断はないが、高グレードリンパ腫と仮定して、抗がん剤治療を進めたいとA病院にお願いする。


8月25日 抗がん剤治療スタートの朝、そーちゃんが良いかんじのウンチをした。
     腸にリンパ腫瘍がある場合、下痢をすると言われているが、そーちゃんは前より元気そうに見える……。
     9日に受診したときより、明らかにふっくらしている(でも、腹水の可能性だってある)。

     本当に、本当にそーちゃんは、高グレードのリンパ腫なのか?
     (高グレードリンパ腫の抗がん剤治療は、点滴や注射となり、それなりに副作用が生じる。
      低グレードリンパ腫その他の腫瘍には、効き目がない。)

     抗がん剤治療スタートの前に、再度、心臓だけではなく腹部までの診察をお願いする。
     レントゲンとエコーの結果、そーちゃんに胸水・腹水は見られず、炎症も小さくなっていた…!
     炎症が小さくなっているのはステロイドの効果で、高グレードリンパ腫はステロイドでは抑えられない。
     つまり、そーちゃんは、高グレードリンパ腫ではない可能性が高い。
     
     心臓の具合もよかったため、高グレードの抗がん剤治療はやめて、
     全層生検(開腹して細胞を採取する)をすることにする。
 
     先生は、閉院後に手術を行い、そーちゃんが麻酔から覚めたあとに電話をくれた。23時18分だった。
     開腹した結果、そーちゃんの胃~腸に腫れているところは認められず(=見えるところに腫瘍はない)、
     一部、出血した跡が見られたものの、それは治りかけているように見えたとのこと。
     摘出した細胞を生検に出し、1週間から10日で確定診断が下ることになる。

           ******************************


はー、長かった!
色分けしてみたけど、心臓の診断で6回、胸部の炎症で3回、腸の炎症で5回転くらい、してるでしょ。

今思えば、最初にA先生が開腹しての生検を提案したときにそうしておけば、もう確定診断は出ていただろう。
でもそれは今思えばであって、心臓のリスクがあると言われているときには決められなかった。

そしてわたしは、素人なので、「どうせリスクを取って麻酔をかけてお腹を切るんだったら、
いっそ生検なんかじゃなくて腫瘍を取る手術をしたほうが良いじゃん」と思っていた。

先生曰く「お腹を開けるって言ったって、生検を採るのと、腫瘍を取るのは全然違うんですよ。
生検はここ(A病院)でもできるけど、腫瘍を取る手術は、チームがいないとできません」と。

そういえば、最初のほうにもそう言っていたかもしれないけれど、急によく知らない病名を告げられて、
頭がいっぱいのときに、いろんな選択肢を出されても、頭がちゃんと処理しきれていなかったな。

細胞診についても、A病院の先生は「細胞診にも腸を傷つけるなどのリスクはあるし、
それが上手く行ったからと言って、診断がつかない可能性があるんですよ」と言っていた。
まあ実際、N病院の先生は、採取には成功したけれど、結局は判定ができるほどの細胞は採れなかったわけだ。

いろいろと遠回りはしたけれど、おかげで、病院や先生によって診断も方針も異なることがよくわかったし、
A病院ってやっぱり良い病院だなと思えたので、よかった気はしている。

実は、わたしがコロナの今、どうやってそーちゃんを預けたかというと、
「院内には入らず、ピンポンしてドアの前にそーちゃんを置いてくる」という方法だ。
発症前で濃厚接触者だったときから、電話して「薬を裏のテーブルに置いて下さい」などと言ってやり取りしている。
こんなことしてくれる病院、そうそうないだろう。

次の朝は9時には開院と決まっているのに、遅くまで相談に付き合ってくれたり、
急遽、開腹手術を引き受けてくれたりする先生に、Wさんに、A病院に感謝……。

もちろんまだ終わったわけではなくて、確定診断が出てからやっとのスタートなんだけれど、
Wさんの言うように、いつも最善を選んでいると信じて、進もう。



# by umitoramarine | 2022-08-26 22:01 | ねこばなし | Comments(0)

しない選択

やっと、心が決まった。

ここ10日間、ずっとずっと悩んでいたのだ。
それは、そーちゃんの手術をするべきか、否かということ。

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前回、そーちゃんの病気は「まだ確定診断が出ていない」と書いた。
それは、まだ出ていなくて、現状分かっているのは「リンパ腫の疑い」と「心筋肥大症」ということ。
そーちゃんの病気が発覚して知ったことだけれど、確定診断を出すというのはけっこう難しいことらしい。
そーちゃんの場合は、そのために、開腹手術をして組織を切り取る必要がある。
もちろん、麻酔が必要となるが、そーちゃんは心臓が悪い(らしい。ここも『確定』ではないが、確定するためには……という魔のスパイラルに陥る)。
そんな中、わたしは、そーちゃんの予後を少し良くするための(確定診断ではなく)手術をするか否か、という選択を迫られていたのです。

わたしは、家で3匹の猫を看取ったことがあって、その経験から、「余計なことはしないほうが猫のため」というのは身に染みていた。だから、そうするつもりだった。でも、実際にその場に立って、「こうしたらもう少し良くなるかも」「少し長く生きられるかも」と言われると、しない選択をするのって本当に難しい。もし、そーちゃんが言葉を話せたとして、「手術したい?」と尋ねたら「しないニャ」って答えが返ってくるのは、聞くまでもないとわかっていても。

毎日悩んで、ある日は「手術しよう」と思ったり、次の日は「やっぱりしないでおこう」と思ったり、気持ちはブランコのように揺れて揺れて。
気持ちを落ち着けたくても、心配してくれた人達から「なにもしないほうがいいよ。猫の気持ちになってごらん」だとか「少しでも良くなる見込みがあるなら、(手術に)かけてみようよ。良い先生紹介するよ」と言われて、その磁力にも振り回されて。

どうしようもなくなり、サードオピニオンを取りに行ってきた。
話が前後するけれど、ここまで、かかりつけの小さな病院と、CTを撮るために紹介されて行った24時間救急もやっている大病院で、心臓の所見について(と、その他いくつかの点でも)意見が分かれていたのです。
でもね、もっと悩むことになる可能性もあるけれど、セカンド、サードオピニオンを取るってけっこう大切だと思う。
病院や先生によっても、所見や治療の方針がかなり異なることが分かるから。確定診断を得られなければ、それも仕方のないことだと思う。

サードオピニオンのクリニックは、インターネットで調べて、家から比較的近い、腫瘍の専門医がいる病院だった。
もし良さそうな病院と先生だったら、今後の抗がん剤治療をお願いするつもりもあって、そこを訪れた。
手術をしてもしなくても、抗がん剤治療はしたいと思っていて、はじめは、かかりつけ医にお願いする予定だったけれど、大病院の先生と比べたら、臨床経験が少ないのだな……と、感じてしまったからだった。でも、そのクリニックへ行ってみて、なんとなくだけれど好きになれなかったし、先生もあまり話しやすい感じではなかった。

ただ、ボツボツと質問をしては「そうですか……」「ですよね……」と俯くだけのわたしにしびれを切らしたのか、その先生は言った。「手術をすれば、2~3か月はふつうに暮らせるかもしれません。でもそれは、心臓の悪い猫に、リスクを取ってまですることですか? 私はナンセンスだと思いますけど」。きっとそれまでは、飼い主が決めることだから、余計な口を出さないように聞かれたことにだけ答えてくれていたのだと思うけれど、それがわたしの欲しかった答えだった。「ですよね! わたしもそう思います。ありがとうございます。」 そう言って、1時間も座り込んでいた椅子から立ち上がって、家に帰ってきた。感謝しつつ、でももう来ないと思った。

帰宅して、すでに営業を終了しているかかりつけ医に電話してみると、すぐにWさんが出た。
Wさんは、A病院の受付であり、看護師であり、オーナー(少なくともその一族)であると思う。
この10年間、ずっとお世話になってきた。院長先生がいた頃から、実際に、分かりやすい説明をしてくれたり、アドバイスをくれるのは、獣医さんではなくてWさんだった。

病理検査の結果が「リンパ腫の疑い」というざっくりしたものだったことを話し、手術はせず抗がん剤治療をすることにしたと伝えると、「(ペットが)癌になってしまった方にはお伝えしてるんですけど……Umiさんはもう何匹も看取られているから余計なことかもしれないですけど……みんな後悔するんです。なにを選んでも、選ばなくても、こうしていればって思うんです。癌の子はとくに……私達も同じなんです。でも、いつも、最善を選んでるって信じましょう」と言ってくれた。電話の向こうで泣いているのがわかった。

うん、やっぱりこの病院がいい。一番親身になってくれて、一番落ち着く。一番通いやすい。
CTも無いし、難しい手術はできない小さな病院だけど、高齢の、先の短い子に高度医療は必要だろうか?
命を1日でも長く、と望むならそうかもしれない。
でも、わたしが望んでいるのは命を長くすることじゃない。
そーちゃんが、1日でも多く、不安や苦しみを感じずに、ふつうに暮らせること。
馴染みのない大病院で、長時間の検査を受けたり、手術を受けたり、入院することは、ふつうに暮らせるはずだった日々を引き算していく。限りあるそーちゃんの残り時間から。

なので、決めました。

限りあるそーちゃんの時間を大切にする。
通院(そこへ行く時間を含めて)などの不安な時間を最小限にする。
A病院にできないことを望まない。
抗がん剤の効果がなければ緩和ケアに移行する。
できるだけ、そーちゃんのそばにいて、一緒にいられる時間を大切にする。

あとは……そーちゃんができるだけ苦しみませんように。







# by umitoramarine | 2022-08-23 23:39 | ねこばなし | Comments(2)

Hope

うちには、3匹の猫がいる。
3匹とも、分け隔てなく可愛がって、大切にお世話しているつもりだけれど、どうしても、どうしても、
心の中で特別な位置を占めているのは、この子、そーちゃん。

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そーちゃんは、わたしが独身のときに、ペットショップで買った猫。
子どもの頃から、動物が好きで好きで、でも飼えなくて、いつかきっと一緒に暮らすことを思い描いていた夢の猫。
1人暮らしで猫を飼うなんて、の線を踏み越えて、そーちゃんをおうち型の箱に入れてもらって自転車で帰宅した、
あの日のことは忘れられない。
あれから14年。今だって、毎日だって、「こんなに可愛い子がわたしの猫だなんて」と、夢みたいに思ってる。
そーちゃんがわたしの人生に現れる前と後は、紀元前と紀元後くらい違う。
なにが変わったって訳じゃないけれど、「そーちゃんがいる」ということだけで、わたしの人生は違うものになった。
ふたりで、たくさん、ほかの誰も知らない時間を過ごした。

そーちゃんとわたしは似ている。
そーちゃんはまたとない美猫で(親バカ的で失礼)、わたしは別に美人ではないけれど、「似てる」と言われたことが何回かある。
見た目より、内面が似ている。
飼うつもりもなかったのに、そーちゃんにどうしても惹かれてしまったのは、ペットショップのガラス越しにも、
なんだかとても自分に似た猫がいると感じたせいかもしれない。
その感覚は今でも変わらない。
長く一緒に暮らしていれば、ほかの猫たちの感じていることや言いたいことくらいは、おおまかには大体わかる。
でも、そーちゃんへのわかり方というのは、もっと深いところで感じている気がする。

そーちゃんは、最近、カーテンの裏にお気に入りの場所を見つけた。
そこにいるそーちゃんを見ると、カーテンの裏に隠れて、小さくて安全な秘密基地で自分だけの時間を楽しんでいた子どもの頃を思い出す気がする。カーテンの肌触り。少し遠くに聴こえる家族の声。そんなことが本当にあったかどうかは別として。
いろんなことを、そーちゃんについては、体感的なものを伴って「わかる」。
それは、わたしが息子に感じることにもよく似ている。
そーちゃんを自分の「子ども」と思ったことはないけれど、同じ血が流れているような近さを感じる。

そのそーちゃんが、病気になりました。
そーちゃんは14歳。もうすぐ15歳。人間でいうと75歳くらいで、この種類の猫の平均寿命ではある。
でもわたしは、飼い始めたときからずっと、20歳までは生きてほしいと思っていて、そーちゃんにもそう言い聞かせていた。
言い聞かせるうちに、それが現実になると思い込んできていたのかもしれない。

猫ボラをしているおかげで、20歳を超えても元気な猫はたくさん見てきた。
彼らはみんな日本猫というか雑種だけれど、外で暮らして、手ごろな値段のフードを食べているにもかかわらず、多くの子達が長生きだ。なので、いつのまにか「14歳は中年」という感覚になっていた。
それに、そーちゃんは、毎年、健康診断も受けていて、今年の2月にも受けたときも悪いところがなかった。
「14歳なのに立派ですね。優秀です」と褒められて、逆に、そんなことを言われるような年齢なのを意識したくらいだ。
それが、今月に入って、少し痩せてきたのが気になり、ただの杞憂に終わるだろうと思いながら病院へ連れて行ったら、
重い病に侵されていることがわかったのです。

最初、悲し過ぎて、どんな慰めの言葉にも傷つきそうな気がして、夫以外の誰にも話せなかった。
どうしたらいいのかわからず、過去に看取った3匹の猫達のことを書いた自分のブログ記事を読んだときに、
当時の状況やら気持ちを思い出せて、それが少し助けになった。
書いておいてよかった、と心から思った。誰かの役に立つかもと思って書いたものが結局、自分に役立ったのだ。

なので、そーちゃんの闘病記をここに綴っていくことにしよう。
そーちゃんの闘病はまだ始まったばかりで、実はまだ確定診断も出ていない。
でもきっと……20歳まで生きてもらうことは、あきらめないといけないのかもしれない。
そうだとしても、そーちゃんの残された時間を、できるだけ幸せな時間にできるようにしたい。
わたしはきっとこれからも悩んで苦しんでたくさん泣くだろうけれど、そんな気持ちもここで整理できたらと思う。


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そーちゃんは、世界で一番大切な、わたしのたからもの。
窓の外の風景が楽しくなるように、プランターを移動しました。





# by umitoramarine | 2022-08-18 00:09 | ねこばなし | Comments(0)

アラフォーのわたしと夫と猫2匹の暮らしに、男児が一人加わりました(2016年11月)。おいしいもの、猫、本、アートと子育て日記。


by umi